合格のための勉強法②

京都公立高校御三家
堀川探求科・嵯峨野こすもす科・西京エンタープライジング科



■ 〈公立高校の復権〉から十余年

 京都はかつて、進学系の公立高校が弱い地域でした。進学の平等を目的として、近所の高校に通う「バス停方式」がとられていたからです。
 しかし1999年に堀川高校に設置された探求科群(2年生で分かれる「自然探求科(理系)」と「人間探求科(文系)」をまとめてこのように呼びます)が、それまでの京都の常識、「進学なら私立の洛洛(洛南・洛星)」の通念を覆しました。探求科の第1期卒業生のうち、国公立大学への合格者が106名にのぼったのです(前年は6名)。これは「堀川の奇跡」と呼ばれ、以後同様の教育改革を行い新設学科を設置する公立高校が、京都の内外に数多く現れました。
 堀川高校に先駆けて(1996)専門学科「京都こすもす科」を設置していた嵯峨野高校と、2003年に「エンタープライジング科」を設置し、翌年から中高一貫教育を開始した西京高校をあわせた3校が、このような公立高校の新設学科のなかで特に人気が高く、受験業界で「京都御三家」などと称されます。

 人気が高いことは、当然、入試の難度が高いことを意味します。公立高校の専門学科は前期試験(以前は「総合選抜」が入学試験として認められる唯一の試験であったため、推薦入試の統一日に「適性検査」の名で行われていました)によって選抜されますが、御三家の問題はその中でも特に難解であることが知られています。

 そのため、御三家は受験するというだけで「すごいね」「頭いいね」など賞賛(やっかみ?)の対象になることもありますし、塾などで受験を勧められても「いや、私なんかではとてもとても……」と及び腰になってしまう人を多く見かけます。
 難関であることは確かですが、正しい知識を持ち、高校に入っても努力を続ける気持ちをもって、取り組むべき対策をしっかりとこなすことができれば、堀川探求科をはじめとする御三家の合格は途方もない目標というわけではありません。前期選抜は私学や普通科、中期選抜と日程がずれていますので、積極的にチャレンジしていくべき学校です。

■ 〈京都公立御三家〉基礎知識

昔から特別学科をおく学校だった

堀川高校

 明治41(1908)年に設立された京都市立高等女学校を前身とする伝統校。戦後共学になり、1997年に音楽科が京都堀川音楽高等学校として分離独立したのをきっかけに、新校舎を建築し特進専門学科である探求科が新設されました(1999)。
 京都府内から優秀な生徒を集め、普通科とはちがう専門学科の独自カリキュラムを実行したことが功を奏し、最初の卒業者が出た平成14(2002)年度には国公立大学への入学者が100名を超え、「堀川の奇跡」と言われました。

西京高校

 明治19(1886)年創立の京都商業学校がルーツ。その後も長く商業科をおく高校として継続していましたが、平成16(2004)年、新校舎の建設をきっかけに生まれ変わり、附属中学を設置して府立洛北高校とともに京都初の公立中高一貫校となりました。
 とはいえいわゆる「併設型」中高一貫教育の学校で、高校からの募集も行っています。附属中学の募集定員は120名、高校は160名ですので、高校から入る生徒の方が多いということになります。

嵯峨野高校

 昭和16(1941)年創立の嵯峨野高等女学校が前身。昭和29(1954)年までは商業科を置いていました。平成8(1996)年、新校舎の完成とともに専門学科の京都こすもす科が新設されました。

 3校のうち2校が元女学校であり、いずれの学校も商業科や音楽科などの専門学科を置いていました。
 時代のニーズの変化に伴い、思い切った変革ができる風土があったことや、専門学科という比較的自由な立ち位置で独自のカリキュラムを作成し、かつ京都府内全域から優秀な生徒を集めることができたことがこれらの学校の成功要因となったことはまちがいないでしょう。

募集人数と受験倍率

   定員倍率(H28)(H27)
堀川160名1.751.54
嵯峨野専修80名1.622.07
共修120名1.692.06
西京160名1.46 1.33

※ 入試倍率は年によって上下する(隔年現象)。およそ1.5~2倍くらいと考えておけばよい。
  専門学科の前期選抜は1校しか受けられないので、受験する生徒の成績層に違いがある。
  その意味では、倍率と受験難度はそれほど相関しないことは注意する必要がある。
 ※ 嵯峨野高校の共修と専修 共修は文系・理系のコースを入学後に決める。専修は自然科学専門コース。

大学合格実績

堀川高校(生徒数計248名)

 東大・京大 66名(うち現役35名) 前年 60
 阪大 20名(うち現役14名) 前年 22
 東大・京大・阪大計 86名(うち現役49名) 前年82

嵯峨野高校

 東大・京大 12名(うち現役6名) 前年 19
 阪大 32名(うち現役28名) 前年20
 東大・京大・阪大計 44名(うち現役34名) 前年 39

西京高校

 東大・京大 29名(うち現役18名) 前年 30
 阪大 26名(うち現役17名) 前年 28
 東大・京大・阪大計 55名(うち現役35名) 前年 58

 実数では私学の洛南が上ですが、学年あたりの合格者数で見ると、東大・京大に最も高い割合で合格者を出しているのは堀川高校と言えます。洛北高校と西京高校がそれに次ぎますが、両校の合格実績は中高一貫クラスの生徒が多くを担っている現実は認識しておくべきです。
 嵯峨野は2016年度の実績では東大・京大合格者数があまり多くはありませんでしたが、阪大の現役合格者数が28名と、御三家の3校中最多であることは注目してよいでしょう。

各校のとりくみ

 大学受験指導だけでなく、各校が独自の取り組みを行っています。
 堀川高校は学問の方法をゼミナール形式で学ぶ探究型授業をいちはやく取り入れ、成果を上げているそうです。西京高校はグローバル社会で活躍できる「グローバルリーダー」の育成を目指し、創造的なコミュニケーション力の伸長や語学教育に力を入れています。
 嵯峨野高校は世界最高水準の「知」の獲得を目指し、国際社会で尊敬される人格と高度な知識や洞察力を備えたグローバルリーダーの育成を図るため、地域連携型の「京都グローバルスタディーズ」を設置しています。

 各校、文部科学省から特別な予算が下りるSSH(スーパーサイエンスハイスクール・堀川と嵯峨野)やSGH(スーパーグローバルハイスクール・堀川、嵯峨野、西京)の指定を受けています。

 また各校とも、運動系をふくむ部活と勉学との両立は可能であること、塾や予備校などに通わなくても受験対策の態勢は十分であることをうたっています。

■ 入試出題傾向

入試科目と配点

堀川

科目時間配点
英語50分100
国語50分100
数学50分100
社会40分50
理科40分50
小論文40分25
報告書100

※小論文は普通科と共通問題

嵯峨野

科目時間配点
英語50分100点
数学50分100点
国語50分100点
理科40分50点
社会40分50点
面接10分程度25点
報告書100点

西京

科目時間配点(A1)(A2)
英語60分150120
国語50分10080
社会40分5040
数学60分150120
理科50分10080
小論文40分5050
報告書150150
面接(なし)50
活動実績報告書(なし)60

※英語の試験時間60分のなかにリスニングテスト(15分)が含まれる。
※小論文(コミュニケーション力)は放送された日本語の文章を聞き取り、内容を要約して意見を述べる形式。
※A2方式 部活や生徒会など、中学校での活動実績を得点に加算する方式。募集枠は定員全体(160名)の10%程度(16名)。

 3年前の公立高校入試改革から専門学科にも内申点が影響するようになりました。
 御三家に合格するためにオール5は必要ありませんが、オール3での合格は難しいです。オール4に5がいくつかあるくらいがボーダーと考えてください。

問題の傾向

 専門学科の前期独自選抜は難問ぞろいですが、公立の学校が学習指導要領外から出題することはありません。たとえば私立難関校である奈良の東大寺学園や洛南は、公立中学校では習わない英単語や熟語を出題しますが、公立高校はそうした出題はしません。あくまで「教科書レベル」の知識で解ける問題を出します。英語の長文問題に出てくる未習の単語は、すべて丁寧に注釈がつきます。

 ですから公立難関校の勉強は知識の詰め込み学習は控えめでOKです。特に英語や社会などの暗記事項が多い教科は、私立受験とは学習法が大きく異なるということを意識してください。
 国語も古語や古典文法に無理して立ち入る必要はありません。

 ただし「教科書レベル」は必ずしも「学校で習ったレベル」とイコールではありません。
 教科書内の発展的な内容や、学校によっては取り扱わないページ(英語ならNew Horizonの「Further Reading」に出てくる単語、理科なら「発展」のコラムの内容など)から出題されるケースも多いのです。
 教科書のすみずみまで目を通して、内容を消化するようにしましょう。

 各科目、知識の量よりも知識の正しい運用の仕方を問う問題を意識して出題している印象があります。
 国語なら文章を論理的に読み解く力、英語なら段落ごとの内容を的確に読み取り、接続関係や同意関係を見抜く力、社会なら雨温図や地形図から情報を引き出して考察する力、理科なら月の運行や実験装置の役割を理解する力、などです。
 こうした力はにわか勉強で身につくものではありません。まる暗記の学習ではなく、それぞれの教科に対する興味関心と積極的な学習態度があって初めて身につく深い理解です。高校や大学での学びにもそのまま生きてくる力ですので、時間に余裕があるうちに、意識して身につけるようにしたいものです。

 市立の2校(堀川と西京)は、東京大学の2次試験をモデルとしているようです。特に国語は、東大の大問1と2の形式をそのまま入試問題に転用しています。堀川の英語も、イラストを見て状況を英語で説明する英作文問題は、東大の出題とよく似ています。

 以下、教科別に出題の特徴と対策の仕方を見ていきましょう。

■ 教科別対策法

 英数国の3教科は時間との戦いです。過去問に取り組み、どの大問をどのくらいの時間で解かなければいけないのかを十分にシミュレーションする必要があります。
 学校によって科目ごとの問題の難しさの傾向はありますが、受験者平均点は年によってかなり変動します。特に理社は近年受験科目に追加されたためか、年によって難しかったり、易しかったりします。想定外の問題が出ても焦らないように(想定外なのは受験者全員のはずなので)、受験する学校の過去問だけでなく、似た傾向の問題を出す学校の過去問にできるだけ当たっておくのが望ましいでしょう。

数学

 数の性質を問う問題、図形問題、確率を問う問題など、バランスよく出題されています。

 私立公立にかかわらずどの難関校にも言えることですが、解けそうな問題と無理な問題を見極め、解ける問題に全力投球することが大切です。
 受験者のほとんどが正解にいたらない難問が潜んでいることが多いのです。そうした問題で立ち止まってしまうと、時間をロスしてしまい、解ける問題を落としてしまうことにもなります。

 普通の問題集にあるようなよく出題されるパターンをまる覚えしているだけで、合格点を出すのは難しいでしょう。
 様々な問題に触れ、見たことのない問題にどのように切り込んでいくのかを自分で考える力を鍛えることが大切です。

英語

 「読解問題の長文が長い。」
 御三家英語の最大の特徴はこれでしょう。
 特に堀川探求科の長文の長さは尋常ではありません。

 制限時間内に解き終わるためには練習(速読と大問を解く順番を決めておくこと)が必要です。
 とはいえ、語数の多い物語文(西京では会話文)の英語は易しいので、練習すればスラスラ読めるようになります。

 それに対し、論説文は長さこそ標準的ですが、論理的な文章構造(段落の最初に筆者の意見や話題がある、など)を理解しているかどうかを問う問題など、大学入試に通じる高度な読解問題が目立ちます。
 単語は私立の東大寺学園や洛南、同志社などと比べれば基本的なので、高校生向けの単語帳で勉強する必要はありません。ただし、教科書に出てくる単語や表現は完璧に覚えましょう。
 特に3年の教科書の巻末にある「Further Reading」はよく読んでおきましょう。

 英作文は英語表現力を問う問題と、教科書にあった基本例文を使いこなせるかどうかを問う問題に分けられます。嵯峨野の英作文のうち、1題は教科書の中からほとんどそのまま出ています。「Speaking Plus」のページなどをしっかり確認しましょう。学校では飛ばしたページもおさえておく必要があります。
 嵯峨野と西京の長文問題の最後に出題される語数の多い作文問題、イラストを説明する問題は前者、嵯峨野の最後の英作文問題は後者におおむね分類できます。難しい文法事項を使おうとせず、自分でわかる英語表現で、伝えなければならない内容の要点をつかんで英文を作る練習をすれば合格点に到達できます。

 長文読解対策としてまずは速読のトレーニングが必要です。しかし、ただやみくもに「速く読む」ことだけを考えてもなかなか上達はしません。速く読めるようになるためには、普段は丁寧にじっくりと読む練習を積むことも大切なのです。
 時間を計って入試問題を解き、点数を出したあとで、その長文を全訳して意味を100パーセント理解するという勉強が効果的です。ただ、あまりに長い文章になると全訳は大変なので、最初の2段落だけとか、10行だけとか、自分なりのルールを決めて取り組んでもいいと思います。
 速読のトレーニングとしては、声に出してなるべく速く読む、いわゆる「速音読」というやり方もあります。英語の発音は上手でなくてもよいので、タイマーを使って、なるべく短い時間で文章を朗読できるように練習をすると、初めて見る文章も意味の分かる部分なら速く読めるようになります。

 志望する学校の過去問は赤本を購入するでしょうから手に入ると思いますが、それ以外の入試問題に触れる機会があるなら、ほかの御三家や桃山自然科学などの過去問は、問題のレベルが似ているので練習になります。
 私学難関は英単語のレベルが高いですが、それでも近隣の学校(洛南や東大寺学園)は取り組んでおいて損はありません。青山学院や早稲田系などの東京の難関私学の単語や文法問題は完全に高校レベルのものが多いので、そういった問題よりは大阪の教育大学附属(平野、池田)など、国立の高校のほうが練習になります。東京なら難関都立高校の入試問題も悪くありませんが、実際にそこまで手を伸ばす余裕がある人は少ないと思います。

国語

 現代文は「哲学入門」とでも呼べそうな、「目に見える世界と自分」との関わりを論じた文章からの出題が目立ちます。「生と死」「主観と客観」といった対立的な概念について、一定の理解が必要です。
 堀川と西京の市立2校は文章の論理構造(対比されている事柄や接続関係、指示関係、同意関係など)に着目した問題が大半を占めるため、練習をしてコツさえつかめば国語が苦手な「理系」でも高得点を狙えます。
 それに対し嵯峨野は人文科学的な感受性を問う出題が目立ち、また物語の出題もあるため、読書量の多い「国語好きな」人に有利な作りになっています。このあたり、問題作成者の国語観の違いが表れているようで興味深いです。

 古文は王朝時代(平安期)の文章よりも、比較的読みやすい近世(江戸時代)の文献を題材とすることが多いようです。また中学3年の教科書に登場する松尾芭蕉にからんだ文章(現代文でも)も多めです。
 高校で勉強する品詞分解や細かな文法事項の知識などは必要ありませんが、学校教科書で学んだレベルの古語(「かたみに」、「やうやう」など)や基本的な助動詞の意味(「む」、「けり」など)、枕詞や係り結びなどの用法は確実におさえておきましょう。

 国語は特に、時間に細心の注意をはらうことが肝要です。満点をとるつもりで臨むと沈没します。テキスト量の比較的少ない古文から取り組み、現代文を後回しにするのが得策です。時間のかかりそうな記述問題は後回しにして、出来る問題をさきに埋めていきましょう。

 「わかりやすく説明しなさい」「比喩を使わずに言い換えなさい」という出題は、大学入試では頻出の出題パターンなのですが中学生には目新しいので不得意な人が多いようです。難しめの問題集などで練習しておきましょう。堀川はほぼ毎年このパターンの問題を出題しています。

 対策の勉強は、教科書レベルの知識をしっかりつけたあとは、出題される文章や問題のレベルに慣れておくことと、過去問題を時間を計って丁寧に取り組むことが大切です。国語は得意だがスピードに自信がないという人をよく見かけますが、御三家に限らず難関校の入試にスピードは不可欠なので少しでも改善しましょう。英語のところでも書きましたが、声に出して早口で読む「速音読」トレーニングが有効です。

理科・社会

 こちらも「教科書レベル」を超える知識が問われることはありません。
 ただ繰り返しますが、これは「学校の授業で扱った内容」とイコールではありません。理社の教科書は、よく見ると細かなところ(資料のキャプションや囲み記事など)に発展的な内容が書き込まれています。中学校の授業でそのすべてをフォローすることはできませんから、受験勉強はその穴を埋めていく勉強が必要です。

 まったく知らないことが聞かれているように見えても、考えるヒントが隠されていることがあります。社会なら地形図や雨温図の読み方、理科なら月の運行の仕組みなど、知識を理科的(自然科学的)な考え方あるいは社会的(社会科学的)な考え方で運用できるかどうかが試されているのです。

 理社は入学試験に導入されて日が浅いためか、同じ学校でも年によって難度にばらつきが見られます。本番でものすごく難しいと感じても、それはほかの受験者にとっても同じ条件ですから、慌てずに解ける問題から片付けていく気持ちが大切です。

小論文(堀川・西京)

 堀川は文章を読んで自分の考えを述べるタイプの小論文。
 西京は放送を聞いてその内容を要約する問題と、それについて自分の意見を書く問題が出ます。

 型にはまった「小論文対策」では、自分でもよくわからないままにトンチンカンな内容を書いてしまう危険があります。
 他人と違う内容を書くことを過剰に意識する必要はないので、文章や放送で扱っているテーマについて、自分の意見をまとめることが大切です。
 過去問題や類題を解き、書いた小論文をほかに人に読んでもらう練習を繰り返しましょう。

■ おわりに

 御三家の入試は難問ですが、これは入学者が3年後に受験する東大や京大などの国立大学2次試験の問題をモデルにしていることはすでに書きました。
 特進の高校はカリキュラムの消化が速く、毎日の予習・復習も大変です。ハードな学習生活についていけるかどうかの素地が問われています。

 高校受験はゴールではなく、中継点に過ぎません。受験勉強を通じて質の高い学習習慣を身に着けられるように努力を重ねましょう。


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